デジタル請求革命の第一歩はデジタルインボイスを正しく理解することから

デジタルインボイスってなんですか?

デジタルインボイスとは標準化された書式のデジタルデータと転送方式を用いて、異なるシステム間でも確実に送受信できるデジタルデータで作成された請求書のことです。従って、デジタルインボイスは言わば標準化された請求データのセット(コードの集合体)ということで、PDFやスマホの画面で目視するにはこのデータセットを専用ソフトで技術的に可視化する必要があります。

PDFの請求書をメールで送るのもデジタルインボイスですか?

PDF化した請求書をメールに添付して送るだけではデジタルインボイスの定義に当てはまりません。請求書の書式と転送方式が標準化されていること、PDF化の前後の動作がデジタル化(自動化)されマニュアル(紙ベース)作業の介在が無いこと等がデジタルインボイスの前提となります。デジタルインボイス(例:Peppol)は従来の「メール+PDF」方式と比べ以下の点で優れています。
✔︎人手の介在が少なく電帳法対策で重要な請求情報の改竄による不正行為の可能性を最大限に排除
✔︎ヒューマンエラーによる二度手間の防止と作業時間の大幅な短縮が可能
✔︎柔軟性の高いXMLデータがベースなので前後業務との連動による請求業務全体の効率化が可能
✔︎元データはいつでも閲覧・取出し可能なので税務上の対応負荷も大きく軽減
✔︎高度なセキュリティーを担保したPeppolネットワーク上での安全・確実なデータ交換
✔︎デジタルインボイスの日本標準仕様JP PINT対応で国際基準もクリア

国際標準のデジタルインボイスにはどんなものがありますか?

国際標準として最も標準化・実用化が進んでいるデジタルインボイスはPeppolです。Peppol(Pan European Public Procurement Online)とは、請求書(インボイス)などの電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「運用ルール」「ネットワーク」のグローバルな標準仕様であり、Open Peppol(ベルギーの国際的非営利組織)がその管理等を行っています。現在、欧州各国のみならず、日本、オーストラリア、ニュージーランドやシンガポール、マレーシアなどの欧州域外の国も含め30か国以上で利用が進んでいます。

国内のデジタルインボイスにはどんなものがあリますか?

国内のデジタルインボイスの取組みは中小流通業界や中小製造業界など業界単位・事業規模単位でのDX化及び業務効率改善の一環として進められてきました。中小流通業向けのBMS、中小製造業向けのECALGA、中小建設業向けのCI-NET等が有名ですが、これらはあくまでも業界内の情報交換・データ交換の効率化を目指したもので、業界を超えた共通仕様に基づいた真の「相互運用性(interoperability)」を実現したものではないため、現在わが国では異異業種間でのデジタルインボイスのやり取りはできません。しかしこの隘路を解消する目的で現在「中小企業共通EDI」実現に向けた取組みが進んでいます。政府はインボイス制度や電帳法の導入をきっかけにデジタルインボイスの国際標準化を視野に2022年からJP PINT(国際標準デジタルインボイスの日本仕様)を導入しPeppolとの連携を推進しています。

Peppolってなんですか?

Peppol(Pan European Public Procurement Online)とは、請求書(インボイス)などの電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「運用ルール」「ネットワーク」のグローバルな標準仕様であり、Open Peppol(ベルギーの国際的非営利組織)がその管理等を行っています。日本ではデジタル庁が所管するJapan PA(Peppol日本事務局)によって管理・運営されています。

Peppolは、「4コーナーモデル」と呼ばれるアーキテクチャを採用しており、ユーザー(売り手(C1))は、自らのアクセスポイント(C2)を通じ、Peppolネットワークに接続し、買い手のアクセスポイント(C3)にインボイスデータを送信し、それが買い手(C4)に届くという仕組みです。Peppolユーザーは、アクセスポイントを経て、ネットワークに接続することで、Peppolネットワークに参加する全てのユーザーとデジタルインボイスをやり取りすることができます。この仕組みは、例えば、Eメールの送り手がメールソフトから送信したメールがインターネットプロバイダーを介して相手先に届くというEメールの仕組みに似ています。なお、わが国のデジタルインボイスの標準仕様である「JP PINT」は、売り手のアクセスポイント(C2)と買い手のアクセスポイント(C3)との間でやり取りされるデジタルインボイスの標準仕様です。

JP PINTってなんですか?

JP PINTとは、Peppolが採用する4コーナーモデルのC2(売り手のアクセスポイント)とC3(買い手のアクセスポイント)の間で交換されるデジタルインボイスの日本標準仕様のことです。C2とC3の間以外つまりC1とC2あるいはC3とC4間のデータ交換に対して、JP PINTは適用されませんが、C2がC1に請求データの生成の際JP PINTに準ずるよう求める可能性もあります。現時点でJP PINTには適格請求書等保存方式(インボイス制度)に対応するPeppol BIS Standard JP PINT、仕入明細書に対応したJP BIS Self Billing Invoice、区分記載請求書(JP BIS Invoice for Non-tax Registered Businesses)に関する3つの仕様がリリースされています。わが国の商取引の実態を反映したより利便性の高いデジタルインボイスとするためこうした日本独自の仕様が増えることも想定されており、今後もJP PINTの動きに注目が必要です。

4コーナーモデルってなんですか?

Peppolが採用しているデータ交換方式です。Peppolでは、商取引におけ売り手をC1、売り手側の中継点(アクセスポイント)をC2、Peppolのネットワークの向こう側にいる買い手側の中継点(アクセスポイント)をC3、最後に買い手をC4と定義しています。C1(売り手)はまず自分の中継点であるC2にインボイスデータを送り、C2はそのデータセットがルール(日本の場合JP PINT)に準拠しているか否か確認した上で買い手側の中継点C3に送ります。C3は受領したデータを買い手であるC4に届ける。これがPeppolが定義するところの4コーナーモデルです。
Peppol 4コーナーモデル

Peppolネットワークでの電子インボイスの解説図。請求データがアクセスポイントを通って売り手から買い手に流れている。
出所:デジタル庁WEBサイト

アクセスポイントってなんですか?

Peppolネットワークにおいて、インボイス発行者からデータを受取りPeppolネットワークへ投げたり、逆にネットワークからデータを受取り受領者に届けるシステム中継点のことです。日本ではOpenPeppolのメンバーでPeppol日本事務局(デジタル庁所管)の認定を受けた組織が運用しています。

エンドポイントとPeppol IDってなんですか?

インボイスを送信・受信する組織または個人のことです。Peppolでは全てのエンドポイントにドキュメントタイプ毎の個別の識別ID(Peppol ID)を付与することで送信先の識別を可能にしています。日本国内では主に法人番号および適格請求書発行事業者登録者番号が識別IDとして採用されています。
日本における識別ID(Peppol ID)
※bondanceではエンドポイントIDと定義しています。
● 0188:法人番号(国税庁により付番された13桁)
● 0221:適格請求書発行事業者登録番号(T+法人番号)

Peppolとインボイス制度(適格請求書制度)の関係ってどうなの?

日本版PeppolであるJP PINTはインボイス制度(適格請求書制度)を前提として設計された仕様です。Peppolを導入する前提として適格請求書番号の取得が求められています。従ってPeppol導入事業者はあまねくインボイス制度に対応しているということになります。

Peppolと電帳法(電子帳簿保存法)の関係ってどうなの?

Peppolは電子文書をネットワーク上でやり取りするための文書仕様・ネットワーク・運用ルールの国際規格と仕様のことです。一方、電子帳簿保存法とは、国税関係(法人税法や所得税法)の帳簿や書類を電磁的記録(電子データ)で保存することを認める法律のことです。従って、両者は直接的には関係ありません。

しかし電子データが介在するという点では共通点がありますし、デジタル庁がデジタルインボイスの国際標準Peppolの日本導入を積極的に進めている現状においてPeppolと電帳法は連続線上にあるものと考えてよいでしょう。いうまでもなく、デジタルインボイスはあまねく商取引の適格性・安全性の担保と業務効率化に資することから多方面から注目を浴びていますが、その中でもPeppol仕様のデジタルインボイスはその汎用性(Versatility)・互換性(Interoperability)・利便性(Usability)から大きな期待が寄せられています。

一方、帳簿や書類は法令上紙で保存することとされてきましたが、紙での保存は整理・ファイリングの手間や保管スペースのコスト負担、或いはPDFから紙への印刷のように電子データになっている文書をわざわざ非デジタル化するなど、業務非効率を招いているという深刻な問題もあります。こうしたビジネスの現場における負荷の軽減と税務対応上の省力化を図る目的で導入されるのが電帳法です。

以下はPeppolの特長の一部を列挙したものですが、電帳法と極めて相性がよく2つが連続線上にあることがよくわかります。

✔︎ 人手の介在が少なく電帳法対策で重要な請求情報の改竄による不正行為の可能性を最大限に排除
✔︎ ヒューマンエラーによる二度手間の防止と作業時間の大幅な短縮が可能
✔︎ 柔軟性の高いXMLデータがベースなので前後業務との連動による請求業務全体の効率化が可能
✔︎ 元データはいつでも閲覧・取出し可能なので税務上の対応負荷も大きく軽減
✔︎ 高度なセキュリティーを担保したPeppolネットワーク上での安全・確実なデータ交換

どんな請求書でもPeppolで送れるの?

どんな請求書でも送れるわけではありません。Peppolで請求書を送受信するにはPeppolの日本運用管理局が定めたJP PINTと呼ばれるデジタルインボイスの日本仕様に準拠しなければなりません。現時点では、消費税の適格請求書等保存方式における「適格請求書」に対応するPeppol BIS Standard Invoice JP PINT(以下、Standard Invoice JP PINTという)、「仕入明細書」に対応するJP BIS Self-Billing Invoice(以下、JP Self-Billingという)、区分記載請求書(JP BIS Invoice for Non-tax Registered Businesses)に関する3つの仕様がリリースされています。

自社の請求書がJP PINTに準拠しているかどうやって判るの?

JP PINTはPeppolの日本仕様です。デジタルインボイス送信の際必要なデータ項目情報を含むJP PINTの全容についてOpen Peppolメンバーに公開されています。Peppol認定SP(サービスプロバイダー)は自社のデジタルインボイス関連サービスを運営する前提としてJP PINTへの完全対応が大前提となりますので、エンドユーザーである一般企業や個人がデジタルインボイス送信の際JP PINTについて心配する必要は全くありません。ほとんどのエンドユーザーはサービスプロバイダーのシステムやアプリを利用すると想定されますので、当該システムが必要なデータ項目を拾いJP PINT対応のデジタルインボイスを生成します。また、全てのサービスプロバイダーに対し、生成されたデジタルインボイスがJP PINTに適合しPeppoネットワークできちんと送れるかどうかのバックグラウンドチェック(Validation check: 有効性の確認)を実行する義務が課せられており、こうした運用手法もPeppolの安全性・確実性に大きく寄与しています。

相手が受信したかどうかどうやって判るの?

大前提として、受信側もPeppolに対応している場合にしかデジタルインボイスを送ることができませんが、送信側のシステムやアプリには必ず送受信履歴機能があり相手方が受信したことも表示されるので受信の事実はリアルタイムで判るはずです。また、受信側も利用しているシステムやアプリがティッカーやリマインダーでデジタルインボイス着信をリアルタイムで知らせてくれるはずです。

(本稿はデジタル庁が提供するPeppol関連情報を部分的に引用しています)

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